どうやって帰ってきたのかはわからない。
走って。
走って。
とにかく走って。
気づいたら家の前まできていた。
壊れかけた門を開けて玄関へ迎う。
その音に気づいたのか、愛犬のラッキーが私目がけて走り寄る。
そんなラッキーに見向きもせず、私は静かに家に入った。
ガチャッ
ドアが閉まる音がやけに大きく聞こえる。
靴を脱ぎ捨て、部屋に入った瞬間、張り詰めていた何かがプツンと切れた。
「ヒッ ヒッ ヒック…」
堪えていたはずの涙が次々に溢れだす。
頭の中に浮かぶのは、ベッドに横になったコウくんの姿…
荒木さんを見つめて笑う、楽しそうなコウくんの姿…
「ヒッ…。よ……かっ…たあ…」
よかった。
コウくんが笑ってて。
コウくんが元気そうで。
よかった…
コウくんが笑っているなら。
コウくんが生きているなら。
もう、それだけで。
私は…
私は…ッ…
「ヒッ ヒッ グスッ…」
喉の奥が痛い。
胸が苦しい。
辛い…
辛いよ。
そう、思いっきり叫んでしまいたいよ…
でも。
でも…
コウくんの笑顔を見たその瞬間、言葉じゃあらわせない程、私の中に幸せが溢れたの。
だから。
言えないよ…
「ヒッ… ほ……とにっ…よかっ…た……」
もう、それしか言えないよ…
そうやって泣き腫らして…。
気づいたときには、もう太陽が昇っていた。

