彼女はその時、隣で笑う少女に違和感を見た。
高校に入ってからの親友である少女は、初対面の時から影があるような気はしていたのだ。
ずっと誰かを捜しているような、待っているような、そんな感じだった。
いつだったか、彼女が『誰か待ってるの?』と冗談めかしに訊いたことがある。
『ううん』そう言った少女は、表情の変化を、上手く隠しているように見えた。
だから彼女も、深くは訊かなかった。
人は皆、一つや二つ、誰にも言えない秘密があると、彼女は知っていたからだ。
隣で笑う少女は、いつもどこか寂しげだった。
今日だってまた、可笑しそうに笑いながら、泣きそうに笑うのだ。
「今日、遅刻してきたよね。珍しい」
彼女がお昼を食べながら言うと、少女は一つ頷いた。
「寝坊したの。目覚まし壊れちゃって」
苦笑を浮かべる少女は、ただの人形のように見えた。
どうしてか、彼女は息苦しくなるのだ。
何故、本当のことを話してくれないのだろう。
自分は、頼りない存在なのだろうか。