少々歩いたところで、人影を発見した。
少年だった。
少年は汚れたアスファルトに座り込み、酷く項垂れていた。
彼は少年を見たとき、自分と同じ空気を感じた。
世界から切り離される瞬間の、脆い空気を。
気付けば、彼は少年に話し掛けていた。
「地の果てまで、堕ちる勇気はあるか」
彼の声に、少年はのろりと顔を上げた。
触れれば、壊れてしまいそうな、そんな少年だった。
少年は虚ろな瞳で、一度、コクリと頷いた。
それしか、答えを知らないような頷き方。
彼は何も言わず、線の細い少年の身体を、背中に負ぶった。
少年は抵抗をしなかった。
二つの影は、そうして路地裏に消えていく。
そして共に、堕ちるところまで堕ちていく。
堕ちた少年は、血に濡れるたびに名を挙げていった。
彼はサングラス越しに空を見上げ、あまりの眩しさに、咄嗟に目を瞑った。