彼がその世界に堕ちたのは、中学を卒業してからだった。
世界から切り離される瞬間に、辛うじて掴んだ場所だった。
光を知らない闇の中で、ただひたすらに血を撒き散らすこと。
それが彼の仕事だった。
銃の使い方にはもう慣れた。
闇の世界の歪んだ空気も、今じゃ居心地の良いものになっている。
そしてその日も、彼は依頼を任された。
「お前、最近、株の上昇ヤバイぜ?」
愛用中の銃の手入れをしていると、グラサン男がニヤリと笑った。
男の手から渡された紙切れには、今宵のターゲットが書かれていた。
「別に株の上昇はどうでもいい。で、コレ、写真とかないの?」
「残念ながら、ねぇんだとよ。ま、場所は特定できてるから、問題はあるまい」
しっかりやれよ、とだけ言い残し、グラサン男はその場を去っていく。
現在の時刻は、丁度、丑三つ時ときた。
ターゲットが現れる時刻と、少々ずれながらも近い。