歩き続けて

病室を出たその時。


『……先生!早川先生!』
誰かに呼ばれた。



振り返って見てみるとさっきの青年が僕のことを追いかけてくる。


『あの、君は?』


『……祐一です。真壁祐一です。明日香と付き合ってます。高校1年生です。』
その目は凄く真剣だった。

一瞬、僕は何とも不思議な気持ちになった。


昔付き合っていた僕の彼女が高校1年生の時に白血病で入院したこと。



この少年は僕と同じ道を辿っている。


その時様々な思いが一度に込み上げてきて苦しくなった。

10年間、忘れることがなかった…


『先生、大丈夫ですか?僕、何か言いましたか?』


『いや、大丈夫だよ。』


『明日香は治りますか?退院できますか?』


『僕も出来るだけのことはやってみます。後は、明日香さんの“生きたい”っていう思いがどれだけ強いか…つらい治療になるけど、祐一くんも応援してね。明日香さんのこと』

祐一の顔がぱっと明るくなった。笑顔が素敵な青年だった。


『もちろんです!ありがとうございます!僕、明日香と同じテニス部で…また一緒にコートに立ちたいんです!試合がしたいんです!だから、よろしくお願いいたします!!』


祐一は深々と僕に頭を下げた。

『こちらこそ。』