今も恋する…記憶


「さくら、ほんまに- これでええの!

もう、後戻りは
出来ないんだよ-」


「もう、ええのん!
これでええのんよ。
お別れはすんだん… 貴方がいたら、
それで、ええのん…」

菊池は玄関の扉を思い切り力を入れて押した… が、扉はびくともしない。

「さくら、外へ出るには どうしたらいいのか わからない…」


「あなた、
私達は死んでいるのよ!
だから、そんな力ずくで開けなくてもいいの…
自分の気持をイメージ、 したらええのん… 」
二人が外へと出たいことを イメージした…

すると、玄関の扉が開かなくても、外へと出ていた…

一歩出たとたん…

あたりは、白い霧におおわれて、何も見えない。
しかし、さくらと菊池は… 霧の中を歩きだしていた。

二人の手は堅く繋がれていて、どんなことがあっても、

離しはしないという気持になっていた…


全く何も見えないのに、歩けるのだ…


しまいには、菊池のほうが さくのらの手を…

ぐいぐいと 引っ張っていた…


菊池は必死になって進んでいる。


すると、突然視界が開けた…

あたりの景色は、どういうわけか…
先程の橋の前だ …


さっきの、あの橋の前に立っているのだが…


よく見ると、橋は切り子模様で飾られ、

その下を流れる川の水はキラキラ光り…


もっとよく見ると…
川の中の石は水晶になり、

河原の石はメノウに変わっていた…


二人は無言だったが、 目を見合わせて、その橋を渡り出した…


その時だ。橋の向こうから声が聞こえてきた。



通りゃんせ、通りゃんせ!

三途の川の渡り橋、
切り子模様も美しく、


河原の石も変化して、
メノウ、水晶に輝いて…


通りゃんせ、通りゃんせ!