二人は手を繋いだままだ
菊池が、さくらの手を強く握り締めている。

まるで返事をしているよう-


『嬉しいわあ〃
返事してくれてるん。
これからは、さくらと ずっと一緒やねん!』

二人はさらに奥へと歩いた…そこは川だ。

綺麗な水が流れていて、木の橋が掛かっている。

その橋を学生服を着た男女が仲良く手をつないで渡って行く。


『うちが、
この人に初めて会った時
学生服は着てへんかったけど、

アルバイト学生やったわ

この人が新聞社へ出勤して来る時は、いつも…
グリ-ンの
ダスタ-コ-トを着てたわ。

そのコ-トの裾をひるがえしながら、

さっそうと、
歩いてくるねん!

うちは、そんな姿を見て一目で好きになって しもたん-』


そして…
毎朝さくらの前を通り抜ける菊池は………

-おはよう~♪
さくらちゃん〃-
右手にまるく握り締めた新聞を振っていた。


もう、随分昔のことなのに、昨日のことのように思えた。


そのうち、菊池が出社して来る頃になると、

胸がときめき、何も手に付かなくなっていた。


ある時など、その胸の
鼓動がドキドキと、激しくなり息苦しくなってきて、

しまいには、職場の奥にある給湯場の片隅に隠れていたら…


-さくらちゃん〃
何してるん!

もうすぐ締め切りの 時間だぞ!-


見つかり、デスクのしげさんに、おもいきり叱られたことがあった。


こんなことも、昨日のこと のように覚えている…