-さくらちゃん♪
来てくれて………
ありがとう-


さくらの目の前の菊池はソファ-から立ち上がり
さくらの肩を両手で押さえた。

その菊池の手が
驚くほど熱かった。


『この人、
昔のこと忘れてるん〃

あんな別れ方したのに…けど、ちょっと嬉しい、

あかん〃
またがっかりしたら、
どうするん!』


-今日は、ほんまに
びっくりしたわ!

あの後、仕事が全く手につかず、さくらのこと ばっかり、考えてた-


その菊池の声がうわずっている。


『ほんま…
まださくらのこと、
覚えてくれてたん!
嬉しいわ。 うちは、やっぱり
好きやねん!
この人のことが-』

「ほんまやわ! 私もびっくりして
どうしたらええのやら 困ってしもたわ」

さくらの肩の菊池の手が震えてる。
さらに、強く掴まれて…
「あの…、うち、肩が 痛いんやけど〃」

菊池は、はっとして自分を取り戻した。


-あっ、ごめん。 僕何してるんやろ!
痛いことしてしもて 悪い、わるいなあ…-

二人は顔を見合わせて、でも、無言が続く-

『うちが、ずっ-と 大事にしてきたんは この日のためやった』

お互いが昔の面影を探している。

最初の別れから7年が過ぎていた。


-さくら、飲み物は 何がいい-

「私、
サクランボの入った カクテルがいい!」

『何で…
サクランボやねん〃 あの時のフルーツサンド 思いだしたん!』

あの時の帰り道、雨が降り出して、

この人の背広が濡れてしもたん!

さくらがそっと、背中を拭いたこと覚えてる。