左隣にいる奈々が、ちらちらと俺の顔を盗み見ているのが分かった。
「健ちゃんさぁ~顔色、やばいよ?」
当たり前だろ。朝からあんなことがあったら、誰だって…。
それに俺は――
「奈々はなんでそんなテンションでいられんだよ。お前…今日のニュース見たか?」
「見たに決まってるじゃん。
学校行ったら、みんな落ちてると思ってね。せめて奈々が皆に元気あげたいな~って。ね?」
何が”ね?”だよ、こんなときに。
そこが単純っていうか、天然っていうか、バカっていうか。
…奈々らしいっていうか。
「健ちゃん…ホント大丈夫?真っ青…」
奈々が俺の鼻先まで顔を近づけてきた。
顔を俺の顔をじっと覗き込んだあと、すたすたと前を歩いて行った。
「……。」
さっきまで寒かったのに、なぜか手がじんわり汗ばむのを感じた。
足ががたがたと震える。
俺は――
