物語の始まりは、1つの殺人事件だった。




『――昨日未明、〇区の〇〇の路上で男性が遺体で発見されました。

男性は何者かに背後から刃物で刺され、路上に横たわったかたちで――』





薄手のカーテンの合わせ目から秋の弱い陽射しが漏れる、とある日の朝。

俺はいつものように家族3人で食卓に座っていた。



俺はふいに、パンにバターを塗っていた手を止めた。



『警察によると、鞄の中にテストの解答用紙が入っていたため、

殺害された男性は東野原中学の教員、尾根 雄二さん(39)だということが分かっています。』




「なんだって?」



 背を丸くして、新聞を読むのに耽っていた父さんが、はっと顔をあげた。
 


「東野原!健の学校じゃないか?!」