こんなに家に帰るのが憂鬱だった事、
今までなかったな。
「ただいま…。」
「あ!チカ!よかった!」
一番最初に飛び込んでくるレイスの笑顔。
まただ…。
また、
胸が苦しいっ。
「レイス…。」
「ん?」
穏やかな笑顔。
わたしの言うこと聞いたら、
どうなっちゃうのかな…?
「…別々に住もうか?」
「…、どうして?」
レイスの顔がゆがんだ。
そんな顔、
ホントは見たくないのにっ。
「…レイスは、自立したんだよ。
…わたしからも、自立しなきゃ…。」
レイスの顔が見えない。
レイスのつらそうな顔、
見たくないし、
自分の顔も、
きっとひどいから…。
「チカは…俺と一緒がいやなの?」
「違うっ…!違うよ…。イヤじゃないよ。」
イヤなんて思ったことない。
最初っから、
不思議なくらい、
レイスといるのが嬉しかったんだ…。
「…俺は、チカと一緒にいたいんだ。」
「…!」
それは…、
わたしがレイスにとっての初めての人間だったからって、
分かってるのに。
分かってるのに…!
それでもわたしは何かを期待して胸が高鳴ってしまう。
「チカと離れたくないんだ!」
「…。」
やめてよ…。
期待させるようなこと、
聞きたくないよ…。
「…っ!」
「?」
突然レイスの苦しそうな声が聞こえた。
「チカ、ごめん!
俺、ちょっと行ってくる!」
「え!?」
「すぐ帰るから!待ってて!」
レイスはそのまま出て行った。
わたしは訳が分からない。
どうしてレイスが出て行ったのか…。
『やっぱりわたしのことがイヤになったから』って考えるのは、
マイナス思考なのかな…?

