「やばい、泣ける」


若干涙目になりながら言った私、上原星は小学六年生である。

今読んでいたのは若い子達に人気の携帯小説が本になった物だ。


「アンタ、涙もろすぎやわ…。それ感動した?」

「した」


親友の前川英里はちょっと毒舌な感じに言った。

言葉からして分かる様に、英里は小学四年生のとき大阪から引っ越して来たのであった。

ってなんだか説明口調な私。…影響されやすいタイプってこういう事を言うのかも。


「私もこんな恋愛したいなぁ…」

「ムリムリ、諦め」

「英里反抗期?」

「そんな事あらへん。正論ゆうただけや」


内心ヒドいなぁ…とか思った私。

でも正論だ。

私は生まれて来てから「恋」というものをした事がなかった。