「うわぁ…」

ホールに入ってみると、意外にそこはあまり大きくもなくて、その代わり人の多さにびっくりした。

小さいと思っていたこの街も、案外広いと実感した。

「今回は直接参加50スペだし、会場も大きくないから人が多く感じるんだよ。それに、オールジャンルのイベの中では規模小さい方だよって言ったでしょ?」

「そっか。そういうことだったの」

「そーいうこと!」

すると、すぐそばにあった受付の人が声をかけてきた。

「直参の方ですか?」

「あ、私たち今回直接参加の、"夢幻狂愛(ムゲンキョウアイ)"様の売り子として来たんです」

ん?ムゲンキョウアイ??
ユリさんって言ってなかったっけ?

「そうなんですか。でしたら、こちらのパンフレットを購入されますか?」

「はい。二部ください」

「では、二部で600円になります」

皐月がチャリチャリと音を鳴らしながらお金を払い、パンフレットを受けとると、一部を僕に渡して歩き出した。

「さ、皐月」

「なに?洋貴」

「これ」

そう言って差し出したのは、300円。

「別に良いのに…」

「僕が嫌なの」

僕がそうやって笑うと、皐月も笑って、そっかと言った。