『ひろき、さつきね、大きくなったら、ひろきのお嫁さんになる!!』

『ぼくも、さつきと結婚する!』

あれ?なんだろう…夢、だよね。
小さいときの夢。

『約束』

『約束ね!』

幼稚で、簡単な口約束。
小指を絡ませて歌った、指切りげんまん。

『『指きった!!』』

悲しくなるほど優しい日の思い出。
皐月は…覚えてるのかな?
僕の、小さいプロポーズ。

"おい、早く起きろよ。
早く起きないと、また襲うぜ?"

「!?」

一気に夢の中から引きずり出される、嫌な感覚。

まだフワフワした夢の中にいたいのに、携帯から流れてくるメッセージが、僕の眠気を覚ました。

いや…覚ました、なんて可愛い感じじゃない。
ぶっ飛ばした、が正しいだろう。

「ったく…人の携帯のアラーム、そんな音に設定すんなって言ってたはずなのに…」

僕はむくりと起き上がると、寝癖がついているであろう髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。

「皐月の馬鹿…!」

そして僕は憎々しげに呟くと、まだ6:30を指し示している時計を見て、着替え始めた。