バックミラーを見ると愛子が男女の1人をこの車へ運ぶ為にこちらに背中を向けている。
エンジンをかけ思い切りバックした。
ボヤける意識の中、もう一度ミラーを見ると愛子がトランクに身体をえびぞりにしてうめいている。

僕は車を前進させてもう一度バックしたんだ。
ガタ、ゴトと車は左右に揺れ動かなくなった。
…もう僕には僅かな力もなかったが愛子が消えた事だけは分かった。
深く目を閉じる…終わる。
全てが。
耳の奥でサイレンの音がかすかに聞こえた。