街灯の青白い光が作り出した長い影が、二つ並んでいる。


片付けを終え、僕たちは駅へと続く道を歩いていた。

静かな住宅街に北村麗華が履いたブーツのカツカツという音だけが響いている。


「明日は大晦日ですね」

と北村麗華が言った。

「そうですね」

僕は気の利いた返しもできない。

自分の声が震えていることに気付いた。

理沙といるときとはまったく違う緊張感だった。


「もう今年も終わりかぁ」

北村麗華は嘆くように言った。

「そうですね」

と僕はまた気の利かない返事をする。

北村麗華がくすっと笑った。「大野さんって、面白いですね」

「え? どこが?」

「変な顔」

そう言って、また彼女は笑った。

僕は顔に力が入りっぱなしだったことに気付いた。

顔全体がピリピリとしている。


「ねえ、大野さん」と北村麗華は言った。「今、付き合っている人はいますか?」