ギュッ…ギュッ…。


足首の上まで積もった雪を踏みつけながら歩く。


午後から降り出した雪はその重さを徐々に増してきていた。


「はぁ…」


夕闇が降りてくる中、自分の吐き出した白い息が目の前をぼんやりと通過した。


こんな半分凍ったような顔からじゃ鼻唄も出やしない。


金曜の夕方。


街中は、明日からの連休で浮かれているっていうのに、僕の住んでいる所は真っ白な雪に閉ざされて、人っ子一人歩いていない。


両脇に並ぶ家までも、無言でひっそりと佇んでいるようだ。



ピュウー…。



強い風に吹かれて、電線が鳴いた。


その音になんとなく顔を上げると、道のずっと向こうに、赤い物が微かに見えた。