あたしは、咄嗟に、音楽室から、飛び出した。




自分のお弁当箱を、音楽室に置いてきたことに気がついたのは、教室に戻ってからだった。




「あれ、陽菜。早いね」




教室に戻ると、優希と香織が一緒に、ご飯を食べているところだった。




「もう、あんな奴知らない!」




「お、ついに、陽菜も愛想つかした?」




香織は、嬉しそうに、手を組みながら笑う。




「陽菜に愛想尽かされたら、あいつ、もう行くとこないじゃん」




「そんなことないよ。他の女のとこ、行けばいい」




「何それー」




「あたしじゃなくても、たくさんいるんだから」




あたしは、香織や優希くんに愛想を尽かされたら終わりだけど、頼にはたくさんいる。




あたしじゃなきゃ駄目だって、そんなことは、絶対無い。




だからこそ、頼もああいう行動に出たのかもしれない。




もう、あたしのことは、必要じゃなかったのかもしれない。