『もしもしゆずー今大丈夫?』
『ご、ごめんねメール気づかなかった』
家に着くなり杏奈から電話が来た。私は一言目から嘘をついた。
『今日委員会だったよね?中里君いた?』
『うん。相変わらずリーダーシップ取って進めてくれたよ』
『やっぱりぃ。いいなぁ会えて』
杏奈は甘い声になり、中里君への変わらない好意をアピールした。
『ねっ、ゆずは中里君と話したりしないんだっけ?』
ドキッと胸が大きく鳴った。まさか一緒に帰りましたなんて言えなかった。
『うーん、そんなに話さないかな。今度話してみるよ』
『話してみて!めっちゃいい人だから。メアドとかまだ知らないんだけどね、やっぱり聞いたほうがいいかな?』
一瞬言葉が見当たらなかった。私は知ってる…だけど。
『聞くべきだよ。連絡取らなきゃ距離も縮まらないしね』
『だよね、ゆずありがとう』
『ううん』
『じゃあ、また連絡するね』
『頑張って』

最後まで嘘の気持ちを伝え続けた。
なぜ言えないのか?
隠さなければいけない、隠したい。正直どっちもあった。
杏奈に勝てる気がしない。
こっそり中里君といい感じに…なんて本当は思ってる自分がいるのではないだろうか。

『今日はお疲れ様。よろしくね☆』
中里君から届いた一通目のメール。
嬉しくて思わず口元が緩む。
しかし、それを見つめながら杏奈を思い、自分がどうするべきかを必死に考えながら放心状態になった。


私はどうしたらいいのだろうか。