「ありがとう」
彼はそっと首を横に振る。白いマフラーが彼の顔立ちをさらに美しく際立たせている。
「星、きれいだね」
「うん」
そんな会話をしながら二人で夜道を歩いた。
何も考えたくない気持ちになった。
傍にいるだけでこんな気持ちになれるなんて、恋ってすごい。

「あっメアド交換しようよ」
「うん!!」
意外な彼の言葉に、私は嬉しくなり大きく頷いた。
赤外線で送受信をする。
彼との距離がわずかに縮まり胸の高鳴りが大きくなった。
「よし、ありがとう」
「こちらこそ」
「西山さんって柚子莉っていうんだね、可愛い名前」
「えー呼びにくいから嫌だよー」
本当は心臓が飛び出そうなほどびっくりして嬉しかった。
「そうかな。俺もゆずって呼んでいい?」
「うん」
彼がニコッと笑い、私もそれに続いて笑顔になる。
こんなに近づけるなんて思ってもなかった。
杏奈のことを気にしながらも彼への好きという感情がどんどん大きくなっていく自分をどうすることもできなかった。

このまま…
このまま時間が止まってしまえばいいのに。