「着きましたよ」 「早っ」 「そりゃ歩きよりは早いっすよ」 バイクから降りてメットを外して返す。 「ありがとう」 「ん。またな、桜井さん」 内田くんは口角を少しだけ上げて笑って軽く手を振って去っていく。 あたしも手を振ったけれど内田くんにはたぶん見えてない。 すぐに小さくなっていく背中。 さっきまで目の前にあったなんて嘘みたいだ。 先生と出逢ってなければあたし、彼を好きになってしまっていたかもしれない。 そんな気がした。