もう、ダメだ。

こんなこと言わせないでよ!

恥ずかしすぎて顔から火が出そうだよ……。


そう、今あたしが浴衣の下につけているのは、浴衣用の下着。

薄い木綿の生地で、長さは膝下10センチぐらいまである。

こんなもの着たまま洋服を着れるわけないし、ましてやブラと違ってかなり薄いんだもん。


……Tシャツ一枚だったら、胸が透けちゃうよ。


しばらく俯いたままでいたけど、蓮君は何も言ってくれない。

不安になったあたしは、真っ赤な顔のまま、そっと顔を上げた。


な……なんで?


蓮君はあたしと張り合うぐらいに顔を真っ赤にして突っ立っていた。


「れ、蓮君……?」


あたしと目が合った蓮君は、はっとしたような顔をして慌てて目をそらした。


「じゃ、とりあえず髪だけでも拭いとけ」


「うん……」


あたしは蓮君から借りたタオルで髪を拭きながら、いつもの定位置である、ベッドとテーブルの間に座った。


蓮君もいつも座っている、あたしの斜め前に腰を降ろした。


「蓮君はシャワー浴びてきたら? 風邪ひいちゃうよ?」


「オレもいいよ。これぐらいすぐ乾くし」


「そっか……」


何故かそこで会話が途切れた。


いつもとは違う空気が漂っているような気がした。


何か話さなきゃ……そう思うのに何も言葉が出てこない。

たださっきから降り続く雨の音だけが静かな部屋に響いていて、この部屋に二人っきりなのだということを実感させた。


うわあああああん……。

どうしよ……。

まずい……この状況はなんかまずいよ。

あまりに静か過ぎて、自分の心臓の音が聞こえてきそう。


――カサッ


その時、ふいに衣擦れの音がして蓮君の体が動いた。