――パタンッ……


自分の部屋に入って、しばらくドアに寄りかかっていた。


そうだ……。

小説、更新しなきゃ。


あたしはパソコンを立ち上げる。

そしてキーボードに手を置いた。

昨日更新した続きを思い出して……それから頭の中のイメージを文字に置き換える。

それだけのこと。

いつもやっていることだ。


……なのに、いつまで経ってもあたしの指は動き出さない。



「……ヒィック……」


代わりに涙がポタポタと机の上に落ちてきた。


涙が止まらなくて、喉の奥が痛くて。

だけど泣き声を誰にも聞かれたくないあたしは、机につっぷして声を押し殺して泣き出した。



ウソ……。


冷静だなんてウソだ。


あたしは無意識のうちに傷つかないように、鎧をかぶっていただけ。


最初から諦めているような振りをしていただけ。


ほんとは苦しくて痛くて……たまんないよ。


今までは……二人が付き合ってなかったから、無理だと頭でわかっていても、どこかにほんの数ミリでも可能性があるんじゃないかって淡い期待を抱いていた。


だけどもう無理なんだ。

蓮君は今日からあたしの幼馴染じゃなくなった。

“美雨ちゃんの彼氏”という存在になってしまった。


もう、今までみたいに甘えることもできないし、会いにいくこともできない。