二人が出て行き、残されたあたしと大輔君。

なぜか会話が見つからず、部屋の中は静けさに包まれていた。



「あ……あのさぁ……」


まるで沈黙に耐え切れないかのように口を開いたのは大輔君だった。


「さっきの話なんだけど……」


「え? さっきの?」


「うん。元カノの……」


「ああ……。まだ好きって……」


「つか、好きかどうかも、わかんねーんだわ。もう……別れて1年以上も経ってんだぜ?」


大輔君は真っ赤な顔のまま頭をくしゃくしゃと掻きあげた。


「この前……あんなことしといて、ヒナちゃんにこんな話すんのもどーかと思うけど……」


「うん……」


「嫌いで別れたわけじゃないんだよね。距離が離れて、自然消滅ってやつ。だからかな……なんかふっ切れてねーの」


「そっかぁ……」


「でも、新しい彼女欲しいって気持ちだけはあったんだよね。だから合コンとかも行くし……ヒナちゃんにあんなこともしちゃったし」


「……」


「けど。やっぱ忘れらんないっつうか。他の誰と付き合っても、結局アイツと比べちゃうんだよね」


大輔君はジッとあたしの目を見つめたかと思ったら、ふいに視線を逸らせて頭を下げた。


「ほっんと、ごめん。こないだは……あんないい加減なことしてしまって……」


「大輔君……」


わかってたよ。

そんなのわかってた。

あの時、合コンから連れ出されたのは、軽い気持ちからだってこと。

大輔君の気持ちがあたしに向いてないことぐらい、恋愛初心者のあたしにだってわかるんだ。


「元カノさんに会いに行ってみれば?」


気が付くとそんなセリフを口にしていた。