鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―

 夏章は顔をしかめながら落ちていた短剣を拾い上げ、短剣から杖に戻す。

「鈴音っ鈴音ェ!!」

「あんまり揺するんじゃねぇよ」

 鈴音にしがみつく詩穂を暁が片手で引き剥がした。

「大丈夫だ。コイツ、腕だけは確かだから」

「おや、信頼して下さっているのでしょうか?」

「さっさと治せ」

 語気を強くして言うと、夏章はやれやれと言いながらまた鈴音に向き直り、集中する。

 杖の先端を鈴音の心臓に当て、詠唱を唱えた。

 鈴音の血液の流れを意識し、細胞を活性化させようとする。

 すると鈴音がほのかな光に包まれた。


 暁はそんな夏章を、鈴音を、見ていることしか出来なかった。

 暁はまだ治癒系統の魔法が使えない。

 なので鈴音を助ける事が出来ないし、ましてや夏章の手伝いさえ出来ない。

 真面目に魔法の勉強をしておけばよかったと後悔するが、いまさら後悔しても仕方がなかった。

 ただただ鈴音の回復を祈り、夏章の腕を信じるしかない。


 悔しい


 何も出来ぬ自分に苛立ちを覚え、唇を強く噛む。

 うっすらと血が滲んでくるがそれでもなお噛む。

 何も出来ぬ自分に対し、夏章は言葉の通り、何でも出来た。

 若くして暁の身の回り全てを任せられるほどの実力の持ち主。

 今、そんな彼に感謝をせねばならない。

 頭では分かっていても、それでも、悔しかった。

 なんでこんなに悔しくなるのだろうかと不思議になるくらい悔しい。


 暁がそんな事を思っている事には気付かずに、夏章が詠唱を唱え終わった。

 光がだんだんと収まり、そこには傷口が塞がった鈴音がいた。

 顔色はまだ少し悪いが、呼吸も正常になり、苦痛の色は消えている。

「鈴音っ!!」

 詩穂は暁を振り払って鈴音に駆け寄り、鈴音が大丈夫なのを確かめると安堵でぺたりとその場に座り込んでしまった。

「もう大丈夫ですよ」

 夏章がうっすらと浮かんだ汗を拭いながら言う。

 暁も鈴音の近くに歩み寄り、ホッと安堵の息をついた。