鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―

 一つ溜め息をつくと、視線を男に戻す。

 男は酸素を求めるかのように口をパクパクと開閉していた。

 涎が口の端から一筋流れ、顔は蒼白へと変わる。

 だが、首は短剣が刺されているにも関わらず血が一滴たりとも傷口から流れていなかった。

 裂けた皮膚の下から更に黒く不気味な皮膚がちらりと覗くのが見える。

「とにかく、暁様。こいつを早く片付けた方が得策かと」

「んなこと分かってらぁ!!いちいち言うな!!」

 暁は男の手首を掴んでいる方とは逆の手で杖を取り出し、腕を伸ばして男の胸の中心に杖の先端を当てた。

 意識を集中させ、唱える。

 男は暁の行動に気付くと急に暴れ始めた。

 腕を振り回し、暁から身体を離そうと必死にもがく。

 だが、抵抗も空しく―――暁が、唱え終わった。

 男の身体が光に包まれ、球体へと収束し、一際眩い光を放つと、消えた。

 跡形もなく、夏章の短剣のみを床へと残して。

「ふぅ…」

「お見事です、暁様」

 安堵の息を漏らすと、夏章が数回拍手した。

 夏章ににっと笑ったのも束の間、

「鈴音…?鈴音?!ねぇ!!鈴音っ!!」

 詩穂の叫びにバッとベッドを振り返る。血の気が引く音を聞いたような気がした。

 血の気が失せ、蒼白な顔をした鈴音がベッドを自らの血で赤く染めながら横たわっていた。そんな鈴音に詩穂が泣きながら必死に名を叫んでいた。

 鈴音の出血の量はさっきよりも幾分減ったものの、大量の血を失った事には変わらない。

 刺された傷よりも、失血の方が深刻になっていたのだ。

 夏章が素早く鈴音に駆け寄り、失礼します、と言いながら服を少しめくって傷の状態を確かめた。

 もともとの傷の深さは浅いが、傷口は思ったより広い。男が包丁を抜くときに傷口を広げたのだ。