包丁が振り下ろされる。狂喜の表情で。
目をぎゅっと強くつむる。ガタガタと震える身体で。
届かぬ叫び声をあげようとする。朦朧とする意識の中で。
そして、男が振り下ろす包丁が―――突然ピタリと止まった。
一人の少女はいつまでも来ない衝撃に小首をかしげ、そっと目を開く。
意識を失いそうな一人の少女は、意識を手放すまいと格闘する中で、光を見つける。
「そいつは俺のもんだ。
―――それとも、俺のもんだって分かっててやってんのか?この外道が」
「あか…つ、き…?」
ポツリと声が出た。
叫ぼうとしても出なかった声が唐突に出た。
ハッキリせぬ視界の中でも、鈴音は男の背後に暁を見つけた。
綺麗なブロンドの髪が光でキラキラと反射している。
絶対的な王が、そこに、いるように、見えた。
暁は男の手首を背後から掴んで包丁を振り下ろす手を止めている。
ぎりぎりと手首を掴む強さを強めた。
「どうなんだよ」
暁が続けて問いかける。
男は引きつる笑顔で、それでもなお卑しい笑みを浮かべていた。
口が大きく開かれ
「ぎゃははッ!!ぎゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃッぐギャッ」
突然耳障りな笑い声を上げたかと思うと、また突然に笑い声が止まる。
男の笑い声が変な声と共に止められたのだ。
「いけませんよ?暁様。こんな雑魚ごときに手こずっていては」
完璧すぎる微笑をたたえた青年によって。
その手には短剣が握られ、刃は男の喉へと埋まっている。
青年―――夏章がいつの間にか暁の横に立っていた。
この二人がいつ出てきたのか少女達には全く分からない。
分かったことは、助かったということだけ。
「手こずってなんかねぇよ!てかテメェ手ぇだすんじゃねぇ!!」
「それは失礼いたしました。…でも、怒りに我を忘れてはいけませんよ?」
「どーゆー意味だよっ!!俺は正気だ!!」
「でしたらいいんですけど」



