鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―

「やっぱり楽しい人だね。鈴音のお母さん」

「えー、うるさいだけじゃん」

 口を尖らせる鈴音に詩穂はクスクスと笑ってしまう。

 もうっ、と口を更に尖らせて詩穂を見る鈴音。

 階段を上がり、鈴音の部屋へと廊下に差し掛かったとき…

 詩穂が視界から消えた。

「…はい?」

 足元を見ると廊下に倒れる詩穂の姿。

 …えーっと、驚かないぞ?さすがに二度目は驚かないぞ?

「詩穂さーん。どういうつもりですかー?」

 返答は静かな寝息だった。

「…」

 無言で詩穂をそのままにし部屋へと向かう。

 扉を開けると棚の上になんの違和感もなく猫のヌイグルミが座っていた。

「暁、ちょっと手貸してくんない?」

「なんだよ。猫の手も借りたい状態か?」

「笑えない」

 冷たく切り返すと暁はブツブツと文句を言いながらも人の姿に戻る。

「で、何だよ?」

「ちょっと来て」

 暁を廊下へと連れて行き、詩穂を無言で指差す。

「あぁこいつか。えっと、“あほ”だっけ?」

「し・ほ!!部屋に運んでくれない?」

「何で俺が運ばな「女の子に運ばせる気?」

 暁の抗議の言葉を遮って冷めた目でつげる鈴音。

 断わるという選択肢の道を閉ざされてしまった暁は数秒固まった後、渋々詩穂をベッドへと運ぶことにした。

 その時、不覚にも少しドキッとする鈴音。

 詩穂が軽いせいもあるだろうが、軽々と抱き上げてしまう姿にやっぱり男の子なんだなぁと思ってしまう。

 けど、何故だろう?

 …胸がチクチクと痛むのは絶対気のせいだ。

「ありがと」

 詩穂を優しく横たわらせた暁に一応礼を言う。

「…なんか、さっきよりも機嫌悪くなってねぇか?」

 確かに鈴音の眉間には皺が深く寄り、心なしか暁を睨みつけていた。

「別に」