「う…ん」

 朝の眩しい日差しが鈴音の部屋に差し込む。
 
 鈴音はいつも通り自分のベッドに寝ていた。

 薄く目を開けた鈴音は、寝ぼけ眼で部屋を見回す。

「あれ?…私の部屋?」

 いつ、どうやって戻ってきたのだろうかと考えてみるが全然思い出せない。

 そもそもあれは現実だったのだろうか?とさえ思えてきた。

(そうだよ!あれは夢!悪夢!あんな事、絶対にありえない!)

 頭を抱えてそう思い込もうとするが、なかなか夢だとは思えない。

(夢だったんなら、すごくリアルな夢だったなぁ~)

 鈴音は身体を起こすととりあえず着替えよう、と箪笥に向かう。

 パジャマを脱ごうと前ボタンに手をかけた時、何かこちらを見る視線を感じた。

(!…もしかして、あの視線?)

 急に訳の分からない不安、恐怖を感じた。

 叫びたいくらいの気持を抑え、ゆっくりと振り返るとそこには

 ――――猫のヌイグルミ?

 沈黙の時間、約十数秒。

「…こんの、エロ猫ぉー!」

 鈴音は机の上に乗って、しっかりとこちらを向いていた猫のヌイグルミの頭を鷲摑みして、思いっきり壁に投げつけた。

 ヌイグルミを投げつけたら、一気に昨日の夜の事が頭をよぎる。

(そうだ!確かに昨日のは夢じゃないんだー!)

 「う~」と呻きながら鈴音は頭を抱え込んでしゃがみこむ。

「鈴音、どうしたんだ?」

 相変わらず声だけのヌイグルミバージョン暁は、投げ飛ばされて床に落ちた状態のまま聞いてきた。

「悪夢が…悪夢が現実だった~…最悪だ~。最低だ~…時間を巻き戻したいよぉ」

 鈴音はそんな事を呻いていた。

「そうそう。だから俺はお妃候補の見張りをしに来たんだ」

「思いっきり、着替えを見てただけじゃない!」