鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―

「そんなに嫌なのか?」

「さっきも言ったじゃない。好きでもない人の妻になるなんて嫌よ」

「なんだ。そんな事かよ」

 「はぁ~」と溜め息を吐く暁。

 カチンと頭にきて鈴音は顔を上げる。

「そんな事って!」

「じゃあ好きになれば良いことだろ」

「え?」

 ぱちくりと瞬きをする鈴音に暁は自信たっぷりに言う。

「俺の事を好きになれば良いだろ?それだけじゃねぇか」

「…馬っ鹿じゃないの?その自信はどこから来てるのよ」

「さぁな。けど、なんとなく惚れさせる自信はあるぜ?」

 呆れて反論する気も失せる鈴音。

 暁はさっき大嫌いと言われた事を、もう忘れたのだろうか?

 にっこりと鈴音に近づいていく。

「な、何?」

 いきなり近づいてくる暁に戸惑い、距離を取るように鈴音は後ずさった。

 鈴音の問いには答えずに暁は鈴音の腕を引き寄せて、前髪を右手で上げた。

 そして―――額にそっと唇を付ける。

 鈴音は状況が理解できず数十秒もの間、硬直していた。

 そして一気に顔が真っ赤になる。

 鈴音の頭の中は大混乱になっていた。

 暁は満足そうに微笑み、今度はそのまま右手を鈴音の目に被せる。

「?」

 そして、夏章の時にも聞いたあの呟きを始めた。

 何と言っているのか、今の鈴音の頭では余計に分からない。

 すると鈴音はフッと目を閉じる。

 意識的にやっているのではなく、急に眠気が戻ってきたかのような感じだ。

 すると続けて今度は身体全体に力が入らなくなり、足がガクンと崩れて暁が受け止める。

(何?)

 鈴音は急に身体が動かなくなり、恐怖を覚える。が、その恐怖心さえ薄れて最後に意識が朦朧としてきた。

 必死に意識だけはと抵抗するが結局意識さえも手放してしまう。

 暁は気を失った鈴音を抱え上げると、膝を曲げて軽く地面を蹴った。

 すると暁は蹴りの威力とは裏腹に凄い勢いで高く跳んでいき、屋上のフェンスに軽やかに着地。

「さて、お姫様を家に帰さねぇとな」

と言って鈴音の家の方向へ来たときと同じように飛んでいった。