鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―

「仕方がありませんね」

「え?」

「では、鈴音様をお妃様候補から外します」

「本当?!」

 本当に嬉しそうな笑顔を見せる鈴音に、暁はムッとした。

「なんだよ。そんなに嫌なのかよ」

「嫌に決まってんでしょう!」

 鈴音の即答。

 鈴音の迫力に気圧されてまた身を引く暁だった。

 だが、鈴音の笑顔も次の夏章の言葉で直ぐに消える。

「ただし、代わりにあの綾瀬詩穂という方を入れさせてもらいます」

「?!」

 鈴音は絶句。暁は頭上にクエスチョン・マークを出した。

「誰だ?その綾瀬何とかって?」

「おや、暁様。もうお忘れですか?鈴音様と一緒にいらした、鈴音様のご友人ですよ」

「…あぁ。何かいたな。そんな奴」

「ちょ…ちょっと待ってよ!」

 鈴音がやっとのことで口を開く。

「何か?」

「何か?じゃないですよ!何でそこで詩穂が出てくるんですか!!」

「仕方ありませんよ。
 鈴音様程の霊感がある人は滅多にと言うほど全くいらっしゃらなくて、お断りされるのはとてもとても残念ですが、詩穂さんも一応強い霊感をお持ちです。
 鈴音様がお断りされるのなら、詩穂さんを代わりに候補に入れさせてもらいます」

「そんなの卑怯よ!」

「何故ですか?」

「それは私が断わらなければ、詩穂は候補に入らないって事でしょう?」

「そうゆう事です。良かったですね。ご友人様が身代わりになって下さって。これで候補から外れますよ」

「…っ」

 鈴音は悔しさと怒りのあまり下唇を噛みながら、上目遣いに夏章を睨む。

(そんなの卑怯だ。私が詩穂を身代わりに出来ないのを多分知ってて言ってる)

 大好きな詩穂に迷惑を掛けたくない鈴音にとって、一番効果的な作戦だ。

 夏章はにっこりと微笑みながら、鈴音を見返す。

「私――――お妃の候補に、なります」

 俯きながら、本当に小さな声で言う。

「本当ですか?それは嬉しいですね。良かったですね、暁様」

「おう?でも、いきなりどうしたんだ?」

「っ!そんなの、あなたの執事に聞けばいいでしょう?!」

 鈴音はくるりと後ろを振り向くと、そのまますごい勢いで出ていってしまった。