あの夏は俺にとって最高で最悪なものだった。

気付いたら横にいて、あっというまにいなくなった君は

今どこにいるんだろう。




「隣に引っ越してきた速水です。よろしくお願いします」

「こちらこそ。何か困ったことがあったら言ってくださいw」


玄関で俺の母さんと笑いあってる人を見て、子供ながらにめちゃくちゃ綺麗だって思った。

俺の存在に気付いた母さんが、手招きをする。
小走りで横に駆け寄ってきた俺の頭を撫でて、


「息子の広紀です。力仕事なら押し付けちゃってください」

と、冗談で言っているのか解らない笑いを含ませて言った。


「あ、うちにも娘がいるんです。今呼んできますね」


嬉しそうに出ていった人を見送って、母さんが呟いた。


「何の洗顔使ってるのかしら」