…それにしても。 いつ見ても客がいない。 だから幹也が「俺が香苗の為に貸し切りにしてんだぜ(笑)」とか冗談で言っても、少し本気にしてしまう 天井ではカラカラとプロペラが回っている。 店内に静寂が訪れた その時、不意に幹也が立ち上がる。 「マスター、チェス借りるぜ~!」 カウンターの奥に消えたマスターに向かい、そう叫んだ 「あいよ~!」 マスターからの返事が返ってきた。 「今日は何賭けるのよ」 毎度の事なので、私は冷めた口調でそう聞いた。 「ん?キス一回」 こりゃ負けられない。