通り過ぎようとした瞬間、手を掴まれて、樹くんのほうに引き寄せられた。 「俺じゃ、話聞いてやれねぇの? 俺じゃ…あいつの代わりになれねぇの?」 「…あいつ?」 「あの1年だよ。 好きなんだろ?」 ……好き? …好きって、…好き? 私が…大川くんを、好き…? 「そんなわけ…ないよ」 まるで自分に言い聞かせてるように。