ねーちゃんは、もう一度、ぼくを抱きかかえ、
ぎゅっとしてくれた。
「私も、一緒にいたいよ。
 くまと、離れたくないよ。
 でもね、できることとできないことがあるんだ。
 つらいけど、…でも、わかって」

ぼくにはわからない。
にーちゃんも、ねーちゃんも、
お互いを嫌いになったわけじゃない。
好きだったら、一緒にいたい。
でも、一緒にいることができない理由がある。
…それが“ニンゲン”なのかな。
だけど、やっぱり、
ぼくには納得できないよ。

「じゃあね、くま。
 元気でね」
ねーちゃんが、扉の外に出て行った。

「にーちゃんの、ばか!」
ぼくは、にーちゃんに向かって、走った。
「なんで、ねーちゃんのこと、止めなかったんだよ!
 ぼくは、にーちゃんと、ねーちゃんと、一緒にいたかったのに!」
にーちゃんは、困った顔をして、ぼくを抱きかかえた。
「いいか、くま。
 くまにはわからないかもしれないけど、
 人間には、感情だけじゃどうにもならないこともあるんだ。
 ねーちゃんだって、それはわかってるさ」
「でも、好きだったら、一緒にいたって、いいじゃない。
 ぼくも、好きな人と一緒にいたいよ」
「それができれば、…俺だって、辛い想いしなかったよ」
にーちゃんは、そう言って、ぼくをぎゅっとしてくれた。
にーちゃんの話を聞いても、やっぱり、ぼくには納得がいかなかった。
「にーちゃんの、ばかばかばか!」
ぼくは、にーちゃんの胸を、叩いた。
「くま…、ごめんな」
ぼくの頭の上に、冷たい何かがかかった。

ぼくは、かなしくて、
すごくかなしくて、
涙は出ないけど、泣いていた。
泣いて泣いて…
…そこで、ぼくの意識は途絶えた。