それから何ヶ月か経った、ある日。
にーちゃんが、深刻な顔をして、帰ってきた。
「…別れた方が、いいよな」
そう呟いて、ベッドの上にゴロンとなった。
“別れるって、…誰と?”
聞きたかったけど、声を出すことはできない。
「一緒にいたいけど、…もう、ムリだよな」
にーちゃんは、そう言って、寝返りを打った。
「なあくま、おまえはどう思う?
 彼女と一緒にいたいか?
 俺と一緒に来るか?」
にーちゃんは、ぼくの方を見て、そう言った。
“もしかして、…ねーちゃんと別れるの?”
やだ。そんなの、やだ!
ぼくは、首を振った(動けないけど)
にーちゃんと、ねーちゃんと、ずっと一緒にいたい。
2人が別れるのはやだし、
ぼくもどちらとも離れたくない!
「別れたくないけど、…引っ越さないといけないんだよな」
「引っ越す」?なにそれ?
「ここにいられるのも、あと1ヶ月ないからな…。
そろそろ荷物まとめないとな」
ぼくは、にーちゃんの言ってることがわからなかった。

にーちゃんの家は、大きな家。
まだ行ったことがないんだけど、けっこう大変な仕事をしているんだって。
で、にーちゃんのおじいさんという人が死んじゃったらしくて、
にーちゃんは家に戻らないといけなくなったんだってさ。
ぼくにはよくわからないんだけど、
そのことが、ねーちゃんと別れることに結びついてるらしい。
…好きなんだから、一緒にいればいいのに。
なんで、好きな人と一緒にいちゃいけないんだろう。
ぼくは、にーちゃんとねーちゃんと、ずっと一緒にいたいな。