「…そんなこと、思いつきもしなかった。今日なら会えると思ったんだ」

 彼はそう言った。

「でも、まさかこんなところで会えるとは思わなかったけどさ」

 本当は、もっと早く帰ろうと思ってたからね。

「まあ、確かめたいことがあったから、好都合だったけどさ」

「確かめたいこと…?」

「昔、何かで聞いたことがある。星型のアザがある人間は、動物に変身することができる、と。聞いた時は半信半疑だったけど、今なら信じられる」

 私も信じられなかったけど、杉峰君がネコに変身していたのは、事実だ。

「1ヶ月前の満月の日、俺は初めておまえと話をした。その頃は、アンタレスになるのが怖かった。でも、話を聞いてもらって、気持ちが軽くなった」

 だけど、それと、ライオンに変身したことは、どういう関係があるんだろう。

「俺の事を理解して、受け入れてくれる人がいてくれたから、自分の力を信じることができたんだろうな。だから、ネコよりも、より力のある、ライオンに変身できたんだ」

 杉峰君はそう言う。

「でも、アンタレスの姿で会っただけて、杉峰君の事を理解したかなんて…」

「俺の話を聞いてくれた」

「…それだけで?」

「理解してほしいなんて思わないし、理解しろって押し付けることもできない。だから、…俺のことを知ってくれるだけで、十分だ」

 杉峰君は、そう言って、私の顔を見た。