「あの、じゃあ、帰りますね」 長机の上に置いておいた鞄を持ち、椅子から立ち上がる。 かたん、と椅子を引く音が響く。 「それでは、また」 そう私が言うと、彼は背を向けたまま、左手をあげ、言った。 「…気をつけて」 その言葉が嬉しくて嬉しくて、私は思わず「はいっ」とお腹のそこから出した大きな声で返事をしてしまった。