そろり。 勇気を出して、顔を上げてみる。 長机をはさんだ向こう側。 呉夜さんの、手、腕、首もと、髪の毛先、そして…… 「え……」 思わず、声が出てしまった。 体が、ぴしりと固まる。 あれ、動かない。 人って予想もしないことが起こると、本当に体が硬直するんだな、なんて。 そんなことを、ぼんやり思っている場合じゃないのだけれども。 いや、だって、呉夜さんの顔、なんだか、赤い、んです。