「私、ここ好きです」





本を棚へ返す作業をしている彼の背中を見ながら、ぽつりとつぶやく。





その私の独り言みたいな言葉に彼が振り向いた。





そして、ふっと笑みをこぼした。





目を細めて、口元に綺麗な弧を描く笑い方。





それは私の、胸の奥のもっと、心臓よりも、もっと深くにある何かを、きゅっと音をたてて震わせる。





「本、すごい好きだよな」





「え…?あ、はい、すごく好き…です」







『あなたが』







なんて、





言えるわけないけれど、本当の気持ちはそうなんだ。





本は、好き。





だけど、それ以上にあなたが好き。





ここに毎日通うのだって、あなたがいるからなんです。