いくら泣かせても、喘がせても、羽璃の中には自分以外の男がいる…


羽璃が自分の言う事を聞くのは、ただ昔から植え付けられた事。


羽璃に何をさせたいのか…


羽璃に何を言わせたいのか…


自分でも分からない…


「磨莉亜…」


考えこんでいると、女がソファーに座った磨莉亜の足を跨いで膝の上に座った。


首に細い腕が絡んでくる。


「…何?…」


「考え事?…一緒にいるのは私なのに…」


「…どけよ…」


「…やだ……」


ふわりと女の甘い香水の香りが舞うと、ゆっくりと磨莉亜の唇をふさいだ。


「…んっ…」


熱に犯されたように、磨莉亜を求めた。


「…ん…まり…あ…」


熱っぽく囁き、唇を離した女の目は潤み、磨莉亜を見つめた。


「…!?…」


しかし、冷めた磨莉亜の瞳と重なる。


カァーッと女の顔が赤くなっていった。


自分だけが盛り上がっていた事に今更ながら気づいてしまった。