磨莉亜は、うなだれかかる女を無視したまま、ビールを飲んでいた。


「磨莉亜ぁー!ビールおかわりいる?」


爆音が流れるクラブ。


取り巻き達は音に負けないように大声で磨莉亜に呼び掛けた。


磨莉亜はグラスに半分入っていたビールを飲み干し、取り巻きにグラスを渡す。


取り巻きはそのグラスを持って、カウンターへ急いだ。


「最近の磨莉亜…いつもより冷たぁーい」


磨莉亜の肩に頬をつけて、女が言った。


ウェーブのかかった茶髪の髪。


バッチリ上乗せされたまつげ。


テラテラとグロスで光る唇。


「今日は、一緒にいてくれるの?」


女の甘い声を無視して、ため息をつく。


「はい!磨莉亜!」


ビールを持ってきた取り巻きから、冷たく冷えたグラスを受けとると、口をつける。


隣にいる甘えた声を出す女よりも、側にいない羽璃が気になる。


自分の思い通りにならない羽璃に苛立っていた。