1


教室はざわめきたち、竹センが生徒達を落ち着かせるのに必死だ。

俺は親父の安否が心配で黒く立ち上る煙をひたすら眺めていた。

「…う君!ねぇ、加藤君!」

「…!えっ?」

木下が必死に俺を呼びかけている。

「変なの!岡田君がまだ寝てるの!」

「はぁ!あんなにものすごい音がしたのに!?」

祐作はさっきと変わらずうつ伏せたまま目を覚ましていない。

「おいっ祐作!」

俺は慌てて駆け寄る。

目下のところ、祐作はガラスで怪我したりはしていないようでホッとした。

…?…ちょっと待て。

爆発音…多分、煙をあげている大学からのものだろう。爆発音と教室の窓ガラスが割れたのはほぼ同時だった。

爆風で窓ガラスが割れたのならば、割れた窓ガラスの破片は教室の中に散るはずだ。

なのに、教室には破片はひとかけらも落ちていない。
窓から下を覗くと、割れたガラスは中庭の花壇の上に散っている。

「加藤君…?」

俺が突然、窓から身を乗り出したから木下が不思議そうにこちらを見た。

「ちょっと木下、見てみろよ」

俺は木下にも外を覗かせた。

「えっ何?」

木下はまだ気がつかない。

「大学方面からの爆風で割れたら、破片は教室の中に落ちてくるはずだよな…?」

「言われてみれば!それにものすごい音がしたけど、爆風なんてなかったわ」

そうなんだ・・・。まるで、教室の中から外へ向かって割れたってカンジなんだ。

「ついでに、こっから他の教室をみてみろよ」

「何これ?どういうこと!?」

「うちのクラスだけなんだよ…窓ガラスが割れたの」

他のクラスは、あの爆発音に騒ぎたってはいるようだけど、どこの教室も窓ガラスは割れていない。