「次郎三郎殿、やはり御身には剣は向かんようじゃ」
 そして疾風のような速さで後ろに居た騎馬武者に走り寄る。
「う、うわっ!」
 馬上の若者は槍を捨て慌てて刀を抜こうとした。鯉口を切り損ね、下に向けた刀が自らの重みで抜けたところを握ってしまった。自分の左手の平を刃で引いた。
「あわ!あわ・・・!」
 自分の手の血を見て身が竦む。
「一の太刀の極意!見よ!」
 右肩上の八艘の構えから剣を切り下げる。その時既に右足は大きく踏み込まれ、背を反らせたまま素振りをするように滑らかに剣先が弧を描いた。
 驚愕する皆の目には、時間の流れが緩やかになったようだった。馬の首に筋が入り、それに沿って首が斜め横にずり下がって行くのが見えた!噴水のような血飛沫を上げて武者と共に首のない馬が倒れた。
 残った七人は恐怖に駆られ、一目散に来た方角へ馬を駆って逃げていった。
「ははは、仲間を見捨てるとは御身等の武士道も地に落ちたものじゃ」
 修理は血飛沫に汚れた菅笠を捨てると、残った馬に跨り、都の方へ駆けて行った。