修理はもう慌てなかった。全て静音にはお見通しだ。
「・・・これがはじめてじゃ」
 静音はそれは本当だと思った。今まで、このような疑惑を感じたことはない。静音の心臓が波打ってきた。
「そんなに金が欲しいか!」
「・・・」
(ああ、欲しい。父上の病の為に)
 だが修理はそれを口にはしない。
 訴えるなり静音のしたいようにするがよい。父上には申し訳がない。腹を切ってお詫び申し上げる。
 修理の開き直りが今度は静音を狼狽えさせた。
 何故、このように修理は変わってしまった?これが今まで兄と呼んで慕ってきた男なのか!今の修理を正せるのは『弟』の俺しかいない!
 静音は息を肩でしながら、
「・・・金なら俺が上げる!俺の小遣いに少し蓄えがある!だから・・・もうするな!」
 修理は驚いた。
 そしてまた愛おしさが込み上げてきた。しかし・・・それは出来ぬ。
「儂は物乞いではない。お師匠様に言うなり好きにしろ」
 修理は後ろを振り向き、静音を残して道場を出て行った。