神無月さんがあたしの親を殺した事自体は、もうどうでもよかった。

なんて言ったら死んだ親や世界中の人に「けしからん」なんて批判を浴びるだろう。

でも本当に、どうでもいい。

あたしの記憶の中に親は微塵も残っていない。
だから、なのかな。

だとしたらあたしには家族の意味なんてわかんない、けど。



「友達未満、恋人未満、家族以上」

「は?何言ってんの?」



友達未満、恋人未満、家族以上、なんだと思う。
あたしと神無月さんは。


「やくざ辞めたら家出しますよ。そんでアキラさんの所に嫁ぎます」

「それは勘弁」


ほら、こんな所は友達未満、彼氏未満、父親以上、だ。



「泣かないでくださいよね、へたれなやくざなんか聞いたことない」


背を向けていたけど『気配』でなんとなく感じ取った。



「お前もな」


気がつくと頬に温かいものが伝っていた。

あたしはベランダに出て神無月さんを一人にしてあげた。



親、ごめん。
あたし、あんたらを殺した奴ともうちょっと一緒にいます。


橙色に染まった薄い雲が形を変え、怒った男女の顔になった。


やばい。

あたしは急いで部屋に戻った。


神無月さんの泣き顔でも拝んでやろう。




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