誠! 岡野誠だ!どうゆう事だ!
と、直也の一番弟子、隼人がいきなり俺の胸ぐらを掴んできた。
「お前ね、こそこそ、こそこそと直也さんの客ばっか、手付けてんじゃねぇよ」
俺は、壁に叩き付けられ倒れた。
直也が、落ち着いた態度で口を開いた。
「仁君…矢崎には言ってあったんだけどね、ホストの仁義守れないようじゃ、この世界から消えて貰うよって……矢崎には昨日限り、もう消えて貰ったんだけどさ……あれだけ注意してたのに…君も聞き分けのない子だね」
と、直也の合図と共に、蹴りがあちこち入った。
腹、背中、顔面、頭部と、目の前で火花が散った。
ドンドンと蹴られている、鈍い音だけが耳に木霊する。
何が何だかわからない、いったい今、何が起きているんだ。
それにしても身体中が痛い、熱い。
長い時間が過ぎた、と感じるのはやられた方だけか?
気が付くと、俺と誠はへたばりこんでいた。
唾が鉄の味…あぁ…口も切れ…歯も折られていた。
直也は、この世界でちょっと名の知れたホストだった。
他店にも連れが一杯いる。
この世界で働く事は……無理になった。



