トイレに行こうものなら、時間を計算したかのように、俺がトイレから出て来たと同時に、おかめもトイレに行く所で擦れ違う。
電話とメールは頻繁。
きっと店で、何でもない振りしなくてはならない分、余計に思いが募っているんだろう。
が、他に見破られては困る。
店内で、俺はずっと冷たく無視を続けた。
仕事が終わったある早朝、目映い表に出ると、一台のタクシーが止まっていた。
横を過ぎようとした時、窓がスーっと開いた。
おかめだ!
「仁!乗りなさい!」
な、な、何、何なんだ!
俺は、周囲が気になった。
戸惑っていた俺に、タクシーのドアが開き、おかめが早く乗れと目で合図する。
辺りを確認してから、俺は車に乗り込んだ。
「岡田さん、いったいどうしたの?何でこんな事する?」
「だって…仁…この頃冷たいから…」
その時、店から何人か、人の出て来る気配がした。
まずい!やばいよ!
俺は身を乗り出し、運転手に言った。
「取り敢えず、車出して下さい」
おかめが酔った目で俺を見ながら、腕にすがり付いてきた。
「どうして、冷たくするのよ、訳を言って」



