「いつも遠くから見ていたのよ。私の熱い視線、感じていなかった?」
おかめが、薄気味悪い笑顔で言った。
「はぁ…いやぁ…マイッタなぁ……」
オカメのメイク、皺に化粧品が溜まっている。
さっき食べたパスタが逆流してきて、俺は思わず口に手を当て、それを飲み込んだ。
ずっと見つめられていた事ぐらい知ってるさ、けど、どう答えりゃいいんだよ。
「あの店に通い出し、もうすぐ1年なんだけどね…直也はいい子だけど、もうそろそろいい加減、飽きがきてね…あの子には、もうずいぶんな事してあげてきたわよ。」
よく喋るババアだなぁ…おかめさんよ、歯の隙間から唾が飛んできてんだよ、さっきから……。
「仁君の事気になってたんだけどね、担当はそう簡単に替えられないでしょ、一度、席に呼んでって直也に言ったのね、そしたら、男のヤキモチってやつ?拗ねられてね…客も大変なのよ、お金使って自由がないんだから…」
「はぁ…礼儀、義理、仁義って…大変な世界っすよね、全く…」
おかめが、色目使いで俺を見た。
な、何だよ? きしょ~きしょ過ぎんだよ!
「店では、可愛がってあげられないけど、外では自由よ。たまにデートしない?」



