青山ひろみはニコッと笑顔を残し、歩いて行った。
指名替え?
そんな事が本当にまかり通るのか?
矢崎から、ホストの暗黙仁義の世界を、嫌と言うほど聞かされていた。
明日から、いったいどうなるんだろう?
明日から、いったいどうすりゃいいんだ?
次の日、出勤した俺を待っていたのは、血相を変えた矢崎だった。
「仁、お前、いったいどんな手使った?」
「?何の事ですか?」
「知らばっくれるなよ!青山ひろみだよ!」
「あっ…昨日……」
「直也さんに言われたよ。お前の教育が全然なってないから、こんな事になるんだって…今回だけは、青山ひろみの事だから、涙を飲んで辛抱するが、今度こんな事があったら、お前もこの俺も、この店から締め出してやるって」
「矢崎さん、信じて下さい。別に俺からアプローチした訳じゃなく、あの女が勝手に、これから担当になってくれって…オーナーに交渉するからって…俺は…それはまずいって拒否しましたよ」
「いらっしゃいませ!」
ボーイの声と共に、あの青山ひろみが店にやって来た。
そして、俺が一番に呼ばれた。
来たぁ~



